Google が Gemini の環境負荷を公開 ー 専門家からは批判の声も

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Google は 8 月 20 日、AI チャットボット「 Gemini 」の環境負荷に関する技術レポートを公開し、1 回のテキストクエリで消費される水は約 5 滴( 0.26 ミリリットル)、エネルギーは テレビを 9 秒間視聴する程度と発表しました。しかし、複数の AI 専門家から「実際の環境負荷を大幅に過小評価している」との批判が相次いでいます。

Google の主張

Google のレポートによると、 Gemini アプリで 1 回のテキストプロンプト(中央値)あたりで見ると、わずか 0.24 ワット時のエネルギー、 0.03 グラムの二酸化炭素、 0.26 ミリリットルの水を消費するとされています。同社は過去 12 ヶ月間でエネルギー使用量が 33 分の 1 に、炭素排出量が 44 分の1 に改善されたと主張し、環境負荷を低減する同社の努力の成果としています。

Google の高度エネルギー研究所責任者である Savannah Goodman 氏は「 業界全体で AI の環境負荷を統一的に測定する基準を作りたい」と述べ、データセンターの冷却システム、電力配給、ネットワーキングなど、 AI サービス全体の環境負荷を考慮した測定手法を提案しています。

専門家からの批判

しかし、この発表に対して複数の研究者から厳しい批判が寄せられています。カリフォルニア大学リバーサイド校の Shaolei Ren 准教授は「彼らは重要な情報を隠している。これは世界に間違ったメッセージを送っている」と指摘しました。

主な批判点は以下の通りです:

間接的水使用の除外 : Google の計算はデータセンターの直接的な冷却水のみを対象とし、電力供給のための発電所での水使用や、サーバー製造時の水消費などを含んでいません。 Ren 氏の研究では、これらを含めるとクエリ 1 回あたり最大 50 ミリリットルの水が必要になると推定されています。

地域差の無視 : Google は全社平均を使用していますが、多くのデータセンターがアリゾナ州やテキサス州など水資源の少ない地域に位置しており、蒸発冷却方式による水消費が深刻な問題となっています。

計算手法の不透明性 : Google は中央値を使用していると説明していますが、専門家は平均値や詳細な計算プロセスの開示を求めています。また、同社は「市場ベース」の排出量計算を使用しており、実際の電力網の燃料構成を反映した「立地ベース」のデータと比較して、環境負荷を低く見積もっている可能性が指摘されています。

業界全体への影響

AI の環境負荷への関心が高まる中、この論争は重要な意味を持ちます。 Gemini は 4 月時点で月間アクティブユーザー数が 3 億 5000 万人を超えており、仮に 1 日数億回のクエリが実行されているとすると、年間の水や電気の消費量は膨大になります。

環境団体 Greenpeace は Google の報告を「グリーンウォッシング(環境偽装)」と批判し、より包括的な環境影響評価の必要性を訴えています。一方で、研究者らは業界全体で統一された AI エネルギー評価基準の策定を求めており、家電製品の Energy Star 評価のような標準化された比較システムの必要性を指摘しています。

Google は批判を受けて「計算手法の詳細を追加で公開する」とコメントしていますが、具体的な対応はまだ示されていません。この論争は、 AI の利便性と環境コストのトレードオフという、技術業界が直面する根本的な課題を浮き彫りにしています。


筆者の視点:Google が公開したデータは計算手法の不透明さや過小評価の疑いから厳しい批判にさらされていますが、現時点での環境への影響を対外的に公開した「はじめの一歩」として評価されるべきものと考えます。また、実際にGoogleは電力消費量の削減にも成功しており、このペースで水や電力消費の効率化・削減の努力を継続すれば、全体として( AI が人類にもたらす恩恵とのトレードオフで考えれば)十分に制御可能な資源消費の範囲内に収まると考えます。