Google の AI エージェント型コーディングツール「 Jules (ジュールズ)」が 2025 年 8 月 6 日にベータ版を卒業し、正式にリリースされました。 Jules は Gemini 2.5 Pro をエンジンとした非同期型の AI コーディングエージェントで、 GitHub からプロジェクトのコードを Google のクラウド環境に取り込み、 AI が自動でコードの修正や機能追加を行います。
従来のツールとの違い
Jules の最大の特徴は、非同期で動作することです。開発者は Jules にタスクを依頼した後、 PC を閉じて別の作業を行い、後で結果を受け取ることができます。これは従来の同期型 AI コーディングツール( Cursor 、 Windsurf 、 Lovable など)にはない機能で、開発者の作業効率を大幅に向上させることができます。
正式版では新機能も複数追加されています。 GitHub Issues との統合により自動でプルリクエストを作成できるようになったほか、マルチモーダル入力にも対応しました。また、環境スナップショット機能では、プロジェクトに必要なライブラリや設定情報を記録しておくことで、次回以降の作業をより速く実行できるようになります。
料金体系の見直し
正式版では料金体系も大きく変更されました。無料プランのタスク上限は、ベータ版の 1 日 60 件から 15 件へと大幅に削減されています。新たに有料プランとして Google AI Pro (月額 19.99 ドル(約 2940 円))と Google AI Ultra (月額 124.99 ドル(約 18400 円))が用意され、それぞれでタスク実行回数の上限が大幅に増加します。これらの変更は、ベータ期間中の実際の利用状況とユーザーの声を反映したものです。
利用実績と今後の展開
ベータ期間中、 Jules は全世界で 228 万回のアクセスを記録しました。利用者の 45% がモバイルデバイスからアクセスしており、専用アプリがないにも関わらず高い利用率を示しています。主なユーザー層は AI 愛好家とプロの開発者で、特にインド、米国、ベトナムからの利用が多くなっています。
プライバシー面では、 Google はポリシーをより明確にしました。パブリックリポジトリのデータは AI の学習に使用される可能性がありますが、プライベートリポジトリのデータはトレーニングに使用されないことが明記されています。
Jules はバグ修正、テスト作成、依存関係の更新、コードのリファクタリングなど幅広いコーディング用途に対応し、新しいプロジェクトでも利用できます。今後は Google 内部の開発プロジェクトでの活用も拡大していく予定で、 AI コーディングツール市場での Google の地位向上につながりそうです。