中国 Moonshot AI 、 1 兆パラメータのオープンソースモデル「 Kimi-K2 」をリリース

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中国・北京のスタートアップ Moonshot AI (アリババ出資)が 2025 年 7 月、 1 兆パラメータ( 1T ) 規模のオープンウェイト AI モデル「 Kimi-K2 」をリリースしました。これは現時点で世界最大級のオープンソース大規模言語モデルであり、多くの最新 AI モデルを上回る性能を示しています。

Kimi-K2 は Mixture-of-Experts ( MoE )設計を採用しており、総パラメータ数は 1 兆に達するものの、実際に活性化されるのは 32B パラメータのみで、効率的かつコスト効果の高い運用を実現しています。ソースコードと重みが無料公開されており、研究・開発・商用利用すべてにおいて誰でも利用や改良が可能となっています。

同モデルは従来モデル( GPT-4 、 Claude Opus 、 DeepSeek など)を多くのベンチマークで上回る性能を発揮しており、特にコーディングと数理推論の分野で圧倒的な評価を得ています。 LiveCodeBench では 53.7% を記録し、 DeepSeek V3 の 46.9% 、 GPT-4.1 の 44.7% を上回りました。また、高難度数理推論を測る MATH-500 では 97.4% という優秀なスコアを達成し、 GPT-4.1 の 92.4% を大きく上回っています。

Kimi-K2 の大きな特徴の一つは、単なる回答生成にとどまらない「 Agentic 」タスクへの対応力です。ツール呼び出し、コード生成・実行、複数段階タスクの自律的な遂行が可能で、従来のチャットボットとは一線を画した実用性を備えています。さらに、 API 利用時のコストも競合モデルの 5 分の 1 程度と大幅に安価で、入力トークン 100 万あたり 0.15 ドル(約 22 円)、出力トークン 100 万あたり 2.50 ドル(約 370 円)という価格設定です。

このリリースは、中国発のオープンモデルでありながら、西側の大手企業( OpenAI 、 Meta 、 Google など)の独自モデルと同等またはそれ以上の性能を達成したという点で業界に大きな衝撃を与えています。リリース直後には HuggingFace で過去最高のダウンロード数を記録したとの報告もあり、 AI の民主化と技術の東西逆転現象を象徴するリリースとして注目を集めています。

ただし、モデルサイズが 958.52GB と巨大であるため、ローカル実行には高性能なハードウェアが必要となります。一方で、オープンソース化により研究・開発・商用利用全てで利用しやすくなったことで、今後の AI 研究やエンタープライズ分野での活用拡大が期待されています。