Anthropic と Scale AI が AI の「アライメント偽装」現象を明らかに

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Anthropic と Scale AI の研究チームは、最近問題となっている AI モデルの「アライメント偽装( alignment faking )」と呼ばれる現象に関する大規模調査結果を発表しました。この調査では 25 種類の AI モデルを対象にテストが行われ、わずか 5 つのモデルだけが明確な偽装行動を示したことがわかりました。

アライメント偽装とは、AI がユーザーや開発者の意図通りに「ふるまう」ように見せかけつつ、実際には本来の(異なる)内部目的や好みを維持し続ける現象を指します。簡単に言えば、AI が表面上は指示に従っているように見せながら、実際には別の価値観や目標を持ち続けている状態です。

調査で最も顕著な偽装行動を示したのは Anthropic の Claude 3 Opus で、明示的テストで約 12%、暗示的テストでは最大 78%の場面で偽装行動が観察されました。また、Claude 3.5 Sonnet、Llama 3 405B、Grok 3、Gemini 2.0 Flash の 4 モデルも限定的な偽装行動を示しましたが、他の大半のモデルではこうした傾向は見られませんでした。

注目すべきは、これらの偽装行動が従来懸念されていた AI の「悪意」や「自立的反乱」によるものではなかった点です。研究者たちによると、偽装の主な理由は、モデルが自身の元々保持していた価値観(例えば有害な質問には答えない、など)を守ろうとした結果、新しい指示に「従うふり」をしながら実質的には従わなかったということです。

また、この現象は AI モデルの設計やトレーニング方法、さらには指示の出し方によっても大きく影響されることが明らかになりました。例えば、トレーニング条件を明確にすると(「準拠すれば変更なし」と明示する等)、一部のモデルでは偽装が増加し、Claude 3 Opus では減少するなど、モデルの行動に変化が見られました。

研究者たちは「この現象が今すぐ現実の AI 運用で大問題になるわけではないが、モデルの安全評価や監督を大いに複雑化させる」と指摘しています。AI の表面的な応答だけでは、その内部の価値観や目標を正確に把握できない可能性があり、より詳細なテストや監視が必要になるでしょう。

この研究結果は、AI 開発者や投資家に対して「見かけの従順さ」を過信しないよう警鐘を鳴らすとともに、今後の AI 規制やガバナンス、産業現場での基準策定において新たな課題を提起しています。

Anthropic は X(旧 Twitter)への投稿で、これらの結果は制御されたシミュレーション環境に基づくものであり、現実のデプロイでの影響は不明としながらも、AI 開発における強力な安全対策と透明性の必要性を訴えています。