AI コーディングプラットフォーム「 Cursor 」を運営する Anysphere は 2025 年 6 月中旬、 Pro プランの料金体系を静かに変更しました。この変更は事前の明確な告知がなかったため、多くのユーザーが突然の追加請求や想定より早い利用上限到達に直面し、開発者コミュニティから強い反発を招いています。
従来の Pro プラン(月額 20 ドル・約 2900 円)では、 OpenAI や Anthropic 、 Google などの先進 AI モデルを使った「 500 回の高速リクエスト+無制限の低速リクエスト」が提供されていました。しかし新プランでは、月額 20 ドルで「 API 利用料ベースの 20 ドル分のクレジット」が付与され、これを超えると追加料金が発生する仕組みに変更されました。
特に問題となったのは、 Anthropic の Claude などトークン消費量が多いモデルを使用する場合、数回の利用でクレジットが枯渇するケースが多発したことです。あるユーザーは 1 日で 71 ドル(約 1 万 300 円)の追加料金を請求され、年間 7000 ドル(約 102 万円)のサブスクリプションを 1 日で使い切ったチームも報告されています。
開発者コミュニティでは「詐欺的( bait and switch )」との批判が広がりました。新料金体系の詳細がモデル選択ページに表示されず、ソースコードを調べないと確認できない状況で、「まるで家を留守にしている間に錠を変えられたようなもの」と例えられています。 Reddit や X (旧 Twitter )では不満が爆発し、スクリーンショットを共有しながら代替ツールへの移行を推奨する投稿が相次ぎました。
Anysphere の CEO マイケル・トルーエル氏は 7 月初旬にブログで謝罪し、「価格改定のコミュニケーションが不十分で、多くのユーザーに驚きを与えた」と認めました。同社は 6 月 16 日から 7 月 4 日までに予期せぬ追加請求が発生したユーザーへの返金対応を実施し、今後は価格変更時の説明強化、利用状況の可視化、ドキュメントの改善などを約束しています。
一方で、競合の動向も Cursor に圧力をかけています。 Anthropic の Claude Code は企業向けに成功し、年商 40 億ドル(約 5800 億円)を達成。よりシンプルな価格体系と無制限のモデルアクセスを提供し、 Cursor からユーザーを奪っています。また、 GitHub Copilot は月額 10 ドル(約 1450 円)と Cursor の半額で競争が激化しています。