Meta は 2025 年 6 月、CEO のマーク・ザッカーバーグ主導で AI 部門を大規模に再編し、人間の知能を超越する「スーパーインテリジェンス」の実現を目指す新たな研究ラボを設立すると発表しました。この動きは、OpenAI や Google などの競合他社に対抗し、AI 分野でのリーダーシップを確立するための野心的な戦略です。
新設ラボのリーダーには、AI データサービス大手 Scale AI の創業者兼 CEO であるアレクサンダー・ワン氏(28 歳)を招聘しました。同時に Meta は Scale AI に約 143 億ドル(約 2 兆 800 億円)という巨額投資を行い、同社の評価額は 290 億ドル超に押し上げられています。この投資により、ワン氏だけでなく Scale AI の優秀な人材も Meta に移籍する見通しです。
この大胆な動きの背景には、ザッカーバーグ氏の強い危機感があります。報道によると、自社 AI モデル「 Llama 4 」の開発進捗に不満を抱いており、「 Meta が最初にスーパーインテリジェンスを実現する」との野心を抱いています。実際に自身で採用活動を指揮し、自宅で AI 研究者やエンジニアと面談を行い、USドルで 7 桁から 9 桁(数十億円~数百億円規模)の報酬条件を提示してトップ人材を引き抜いています。
スーパーインテリジェンス・ラボは、現在の生成 AI や大規模言語モデルを超えた、人間の知能を凌駕する AGI (汎用人工知能)の開発を目標としています。約 50 人規模の精鋭チームが集結し、Meta 本社のザッカーバーグ氏のオフィス近くに配置される予定です。Google DeepMind や OpenAI など、競合大手からも研究者・エンジニアを積極的に引き抜いており、業界全体での人材獲得競争が激化しています。
Meta は今年 5 月に AI 部門を「 AI プロダクト」と「 AI ファウンデーション」に分割し、長期的な基礎研究と短期的なプロダクト開発を並行推進する体制に移行していました。しかし、既存の AI 開発体制では競合他社に後れを取ると判断し、今回のスーパーインテリジェンス・ラボ設立に踏み切ったものと見られます。
Scale AI との関係も注目されます。同社は AI モデルのトレーニングに必要な高品質データのラベリングサービスを提供しており、OpenAI や Google を含む多くの AI 企業を顧客に持ちます。Meta の巨額投資後も Scale AI は独立性を維持しつつ、商業提携を拡大する予定です。ただし、競合他社との利益相反が発生する可能性も指摘されています。