アメリカの防衛テック企業 Anduril と Meta (旧 Facebook )は、米軍向けの次世代拡張現実( XR )デバイスを共同開発するパートナーシップを発表しました。この提携は、米陸軍の「 Soldier Borne Mission Command (SBMC) Next 」プログラム(旧称 IVAS :Integrated Visual Augmentation System )に基づく軍事 XR 技術開発の新たな潮流を象徴しています。
両社が開発中の「 EagleEye 」と呼ばれる新しい XR プラットフォームは、兵士にリアルタイムで戦場情報を表示し、視覚・聴覚能力を拡張する技術です。AI による意思決定支援や自律兵器システムの直感的な操作を可能にし、戦場での兵士の状況認識と作戦遂行能力を大幅に向上させることを目指しています。
EagleEye システムは、Meta の Reality Labs による AR / VR 技術と Llama AI モデル、Anduril の AI 指揮統制ソフト「 Lattice 」を統合することで実現されます。現場でのデータ処理や脅威検知、部隊間のシームレスな通信機能を備え、デバイスは軽量かつ耐久性を重視した戦闘環境での運用を前提とした設計となっています。
もともと IVAS プログラムは Microsoft が主導していましたが、度重なる技術的問題により 2025 年 2 月に Anduril が主契約者となり、Microsoft はクラウドサービス提供に回りました。Meta はこの分野で消費者向け AR / VR 技術の小型化・高性能化に強みを持つ一方、Anduril は軍事 AI ・自律システム開発で実績を積んでいます。
この提携には象徴的な側面もあります。Anduril 創業者のパーマー・ラッキー氏は Oculus (Meta が 2014 年に買収)の共同創業者でもあり、Meta との再タッグは業界内外で注目を集めています。Meta CEO マーク・ザッカーバーグ氏は「米国の安全保障に貢献できることを光栄に思う」とコメントしており、これまで軍事分野との距離を保っていた同社の戦略転換を示しています。
Meta にとっては、AI ・ XR 技術を防衛分野へ本格展開する初の大型案件となります。Anduril は AI 戦争時代の”ターンキー”プロバイダーとしての地位を強化し、両社は現在、最大 1 億ドル(約 144 億円)規模の米陸軍契約獲得を目指しています。米軍は複数ベンダーによる XR デバイス供給体制を目指しており、今回の提携はその一環として位置付けられます。