トランプ政権、バイデン政権の AI 半導体輸出規制を撤回

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トランプ政権は 2025 年 5 月 13 日、バイデン前政権が導入した AI 半導体の輸出規制「 AI 拡散ルール」を撤回すると発表しました。代わりに、個別の国との交渉を重視した新しい半導体管理戦略を導入する方針を明らかにしています。

バイデン政権の「 AI 拡散ルール」は、世界各国を 3 つの階層に分けて先端半導体の輸出量を制限する規制でした。中国への技術流出を防ぐ目的で 2025 年 1 月に策定され、5 月 15 日の施行が予定されていました。しかし、この規制は Nvidia や AMD などの半導体企業から「過度に複雑で、海外売上に深刻な打撃を与える」として強い反発を受けていました。

商務省は撤回の理由として、米国の技術革新を阻害する可能性、企業への過度な負担、同盟国を含む多くの国への配慮不足、そして規制の複雑さを挙げました。特に中東や東南アジアの国々からも、米国製チップの入手が困難になることへの懸念が寄せられていました。

新しいアプローチでは、世界を一律に階層分けするのではなく、各国との個別交渉を通じて AI チップの輸出を管理します。これにより、サウジアラビアや UAE など戦略的に重要な国々との関係を強化しながら、AI データセンター建設などの大型プロジェクトを支援することが可能になります。

ただし、中国に対する制裁は継続・強化される方向です。商務省は、ファーウェイの Ascend AI チップが米国技術を不正使用して開発された可能性があるとして業界に警告を発しました。また、米国の AI チップが中国の AI 開発に悪用されるリスクについても注意喚起を行っています。

この政策転換について、Nvidia の ジェンスン・フアン CEO は歓迎の意を示しました。同氏によると、バイデン政権の規制により同社の中国市場シェアは 95% から 50% に急落し、売上も数十億ドル(約 2900 億円から 7250 億円)の損失を被ったとされています。

今回の撤回により、米国の半導体企業は中東やアジア市場での事業拡大の機会を得る一方、国別交渉による不透明さが新たな課題となる可能性があります。また、中国は Huawei などを通じて半導体の自給自足を進めており、米国の規制が逆に中国の技術力向上を促すリスクも指摘されています。

トランプ政権は、技術革新の促進と国家安全保障の両立を図りながら、変化の激しい AI 半導体市場での米国の優位性を維持するという困難な課題に取り組むことになります。