仏Mistral AI、高性能かつ低コストの新モデル「Mistral Medium 3」を発表

投稿者:

フランスのAIスタートアップMistral AIが発表した「Mistral Medium 3」は、高性能かつ大幅なコスト削減を実現した最新の生成AIモデルです。従来の大規模モデルと同等のパフォーマンスを、8分の1のコストで提供する点が大きな特徴となっています。

Mistral Medium 3は最先端(SOTA)の性能を誇り、AnthropicのClaude Sonnet 3.7に対して90%以上のベンチマークスコアを記録しています。特にコーディングやSTEM(科学・技術・工学・数学)分野、マルチモーダルタスクで強みを発揮します。価格設定も非常に魅力的で、入力トークン100万あたり0.4ドル、出力トークン100万あたり2ドルという低価格。これはClaudeやGPT-4oなど競合モデルの約8分の1の運用コストです。(中国のDeepSeekなどの低価格モデルと比較するとほぼ同程度の価格)

また、128Kトークンまで対応する大規模コンテキストウィンドウを持ち、長文や複雑なタスクにも対応可能。企業のニーズに合わせて、クラウド、オンプレミス、VPC(仮想プライベートクラウド)など、柔軟な運用方法を選べます。4枚以上のGPUがあれば自社運用も容易です。

技術的には、効率化されたトランスフォーマーアーキテクチャを採用。パラメータ共有やスパースアテンションの導入により、従来比60%の計算コスト削減を実現しています。高度な知識蒸留(Distillation)とRLHF(人間のフィードバックによる強化学習)により、大規模モデルから効率的に知識を継承し、精度と効率性を両立。さらに、フランス語やアラビア語など多言語に強く、画像や表の理解も可能なマルチモーダル対応も特徴です。

同時に発表された「Le Chat Enterprise」は、Mistral Medium 3を基盤としたエンタープライズ向けAIプラットフォームです。主な機能として、Google DriveやSharePointなどの社内データを横断検索する「エンタープライズサーチ」、ノーコードで業務自動化AIエージェントを構築できる「エージェントビルダー」、自社システムとの連携を容易にする「カスタムコネクタ」などを備えています。

他社との大きな違いとして、ヨーロッパ発のAIであることが挙げられます。欧州の規制(GDPR等)に完全対応し、データ主権を重視しているため、金融やヘルスケアなど規制産業にも最適です。また、オンプレミスやVPCでの運用が可能なため、データを外部に出せない企業でも導入しやすく、Claude EnterpriseやChatGPT Enterpriseと比較して大幅なコスト優位性を持っています。