習近平国家主席は、2025年4月25日の中央政治局会議で、AI(人工知能)分野における「自立と自己強化」を国家的な最優先課題とする方針を明確に打ち出しました。この発言は、米国との技術覇権争いが激化する中で、中国がAI技術の自給自足を目指す姿勢を鮮明にしたものです。
習主席は「新しい全国統一体制」を活用して AI 開発を推進する必要性を強調し、高性能半導体や基幹ソフトウェアなど、AI の根幹をなす技術の国産化を加速させる方針を示しました。政府調達、知的財産、研究開発、人材育成などの分野で政策的支援を行う考えも表明しています。
4月29日には上海の「上海基礎モデルイノベーションセンター」を訪問し、AI 技術の「爆発的成長」を認め、開発とガバナンスで上海が主導的役割を果たすよう指示。この動きの背景には、米国による先端半導体や AI 関連技術の対中輸出規制があり、中国は国外技術への依存を減らし、独自の技術エコシステムを構築する必要に迫られています。
中国の AI 企業「High-Flyer」が開発した「DeepSeek」は、2025年初頭に低コストかつ高性能な AI モデルとして世界的に注目を集め、OpenAI などの西洋モデルに対抗する存在となっています。上海の AI 産業規模は2024年に4,000億元(約8兆円)を超え、2025年までに世界クラスの AI 産業エコシステムを構築する計画が進行中です。
AI 自給自足が重要視される理由として、国家安全保障の確保、経済成長の促進、国際競争力の向上が挙げられます。また、習主席は AI 開発を通じて「グローバルサウス」のリーダーシップを強化する意向を示し、BRICS 諸国や新開発銀行(NDB)との協力を推進しています。
中国は AI 分野での自立を国家戦略の柱とし、米国との技術競争に本格的に対応する体制を整えつつあります。