ベルリンを拠点とするリーガル AI スタートアップ Noxtua(ノクスチュア)が 2025 年 4 月、欧州の法律業務をより効率的にするための AI 開発に向けて、約 8,070 万ユーロ(約 131 億円)の資金調達を実施しました。今回のシリーズ B ラウンドは、ドイツ最大手の法律出版社 C.H.Beck が主導し、ハイパフォーマンスコンピューティング企業の Northern Data、大手法律事務所の CMS や Dentons などが参加しています。
Noxtua の特徴は、欧州の法制度や GDPR などのデータ保護規制に対応した「ヨーロッパ独自の AI」を開発している点です。米国企業の AI に頼らず、欧州の価値観を大切にしながら、独自の技術を磨いています。同社の AI モデルは、法律の専門家が丁寧に選び、ラベル付けした質の高いデータで学習しているため、法律特有の表現やニュアンスを的確に理解できます。
今回の調達で特に注目したいのは、法律出版社 C.H.Beck との戦略的提携です。同社が保有する 5,500 万件以上の法的文書データベースを活用し、「Beck-Noxtua」という新しい AI サービスの開発が進められています。このサービスは、法律事務所や企業の法務部門が日々行う法律リサーチ、契約書のチェック、訴訟文書の作成といった業務を効率化することを目指しています。
Noxtua のミッションは、法律業務をテクノロジーで支援し、弁護士の方々がより創造的な仕事に集中できる環境を作ることです。繰り返しの多い作業を AI に任せることで、法律サービスの質を高めながら、働く人の負担を軽減できると考えています。
オックスフォード大学やインペリアル・カレッジ・ロンドンでの研究を基盤に設立された同社は、法律の専門知識と最新の AI 技術を組み合わせ、欧州の法律業界に特化したサービスを提供しています。調達した資金は、製品開発の強化、技術インフラの整備、そして欧州各国への事業拡大に活用される予定です。
法律業務の効率化が求められる中、Noxtua の取り組みは欧州のリーガルテック市場に新しい風を吹き込んでいます。欧州の価値観を尊重しながら、法律業界のデジタル化を推進する同社の挑戦に、今後も注目が集まりそうです。