Google DeepMind の CEO であるデミス・ハサビス氏が CBS『60 Minutes』に登場し、 AI の未来と人工汎用知能( AGI )実現に向けた展望を語りました。元世界ジュニアチェスチャンピオンで、タンパク質構造予測 AI「 AlphaFold 」の開発により 2023 年にノーベル賞を受賞したハサビス氏は、 AI の次なる進化と社会への影響について興味深い見解を示しています。
番組内では、画像・音声・テキストを統合的に解釈し、現実世界を理解・対話できる「視覚を持ったチャットボット」として開発中の「 Project Astra 」が紹介されました。このシステムは絵画を分析し、登場人物の感情や背景物語まで想像して語る能力を持ちます。また DeepMind の主力 AI モデル「 Gemini 」は、今後 Web 閲覧やネットショッピング、旅行予約など、現実世界に介入する AI を目指しているとのことです。
ロボティクスの進化も注目点で、ハサビス氏は指示を「推論」によって理解し実行可能な知的ロボットのデモを披露。例えば「黄色と青を混ぜた色のブロックを同じ色の器に入れて」という指示に対し、ロボットは黄色と青の組み合わせが緑であることを自ら推論し、タスクを実行する様子が紹介されました。ハサビス氏は今後 2 〜 3 年で「有用な人型ロボット」が現れると展望しています。
AGI の実現時期については「 5 〜 10 年以内」と予測し、「想像力」「直感」「好奇心」といった人間らしさを AI が獲得しつつあると説明。同時に現在の AI には「自己認識」「意識」「新しい仮説を自ら考える能力」がなく、これらの特性が今後どう発展するかについても言及しました。
ハサビス氏は AI の 2 つの懸念点として、悪意ある人間による利用(兵器化、詐欺など)と AI 自身の暴走(自律性と力を持ち過ぎた結果、制御困難になる)を挙げ、「ガードレール(安全制限)」の設計と国際協力・ルール策定の重要性を強調しました。
AI が人類社会にもたらす変化については、病気の治療期間を「 10 年→数ヶ月、あるいは数週間」に短縮し、「病気のない未来」の実現も 10 年以内に可能との見方を示しています。ハサビス氏は AI を「全ての人間の活動を拡張するツール」と位置づけ、人類が「物質的・知的欠乏から解放された社会( Radical Abundance )」に向かうビジョンを語りました。