Shopify CEO が AI の活用を全社に義務付け

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ShopifyのCEOであるトビ・ルートケ(Tobi Lütke)は、社内向けに人工知能(AI)の戦略的な活用を全社的に義務付けるメモを公開しました。このメモは、当初社内向けに発信されたものをリークされる前にルートケ自身が X(旧 Twitter)上で公表したものです。

ルートケの投稿によると、「リフレクティブな AI の使用は、Shopify の全員にとって基本的な期待事項」とされています。ここでいう「リフレクティブな AI 使用」とは、単に AI を使うだけでなく、意識的かつ戦略的に AI を活用し、その結果を詳細に分析しながら業務に組み込むアプローチを指しています。コーディング、リサーチ、書類作成など、あらゆる業務において、AI を「思考のパートナー」として積極的に活用することが全従業員に求められています。

特に注目されるのは、チームが新たな人員やリソースを要求する前に、まず AI でそのタスクが実行できないことを証明する必要がある、という新ルールです。これは単なるコスト削減策ではなく、AI との協働を通じて業務プロセスや問題解決方法を根本から見直す取り組みとして位置づけられています。

この方針は全社的なもので、経営陣から一般従業員まで例外なく適用されます。さらに AI の使用状況とその活用の質は、従業員の人事評価に組み込まれる予定です。Shopify 社内では既に GitHub の Copilot や Anthropic の Claude、Cursor などのコーディングツールが導入されており、ルートケ自身も社内サミットでのスピーチ作成に AI を活用し、その体験を積極的に共有しています。

背景には、Shopify が年率 20~40%で成長しているとされる中、従業員も同等の成長率を達成する必要があるという考えがあります。ルートケは AI を戦略的に活用することにより「 10 倍の生産性向上」が見込めるとし、この変革を推進しています。

この動きは、技術業界全体で進む AI 活用の加速を象徴するものとして注目されています。OpenAI の CEO、サム・アルトマンが「一部の企業では AI がコーディング業務の 50% 以上を担っている」と発言したように、AI による業務の変革はすでに始まっています。そうした中での今回の Shopify の取り組みも、業界全体に影響を及ぼす可能性が高く、AI の業務活用は今後さらに拡大していくと見られます。

一方で、この方針には「停滞はゆっくりとした失敗」「登らなければ滑り落ちる」といった今回のルートケの表現は、従業員に過度なプレッシャーをかけるのではないかとの懸念も出ています。