スタンフォード大学が「 AI Index 2025 」を公開、 AI 普及の加速と課題を明らかに

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スタンフォード大学人間中心人工知能研究所( Stanford HAI )が 2025 年 4 月 7 日に公開した「 AI Index 2025 」レポートは、 AI の現状を包括的に分析し、 AI システムの急速な普及とアクセシビリティの向上が顕著であることを示しています。このレポートは技術的な進歩、経済的影響、教育、政策、責任ある AI など多岐にわたる分野をカバーし、456 ページに及ぶ詳細なデータを提供しています。

レポートによると、 AI のビジネスへの導入が加速度的に進んでおり、 2024 年には世界の企業の 78 %が AI システムをワークフローに導入しています。2023 年の 55 %と比較し、大幅に増加していることがわかります。また、医療分野では FDA (食品医薬品局)が承認した AI 搭載医療機器が 2024 年 8 月時点で 950 件に達し、 2015 年の 6 件や 2023 年の 221 件から急増しています。

AI システムがより手頃で利用しやすくなっている点も注目されています。小規模モデルの性能向上により、 GPT-3.5 レベルのモデルの推論コストは 2022 年 11 月から 2024 年 10 月までの間に 280 分の一以上低下しています。ハードウェアレベルでもコストが年 30 %減少し、エネルギー効率が年 40 %向上しています。

また、オープンソースに近い「オープンウェイトモデル」がクローズドモデルとの性能差を縮めており、 2024 年には一部のベンチマークでその差が 8 %から 1.7 %にまで減少しました。これにより、先端的な AI へのアクセス障壁が急速に下がっています。

AI への投資も活発で、 2024 年の米国における AI への民間投資は 1,091 億ドル(約 16 兆円)に達し、中国( 93 億ドル、約 1.4 兆円)や英国( 45 億ドル、約 0.6 兆円)を大きく上回りました。特に生成 AI への投資が 339 億ドル(約 5 兆円)と、前年比 18.7 %増加しています。日本は 9 億ドル(約 1,300 億円)で、調査対象国の中で 14 番目にランクされています。

一方で、 AI 関連のセキュリティ関連インシデントの増加や、大手開発者間での標準化された「責任ある AI 」の評価不足など、課題も指摘されています。また、アフリカなどでは電力不足が AI 教育や利用の障壁となっており、グローバルな面で AI へのアクセスに不均衡が起こっている点も課題として残されています。


筆者の視点:スタンフォード大学の HAI 研究所が毎年発表している「 AI Index 」レポートは、AI の動向を包括的にまとめた資料であり、AI の大きな流れを把握するのに非常に有用です。

今年のレポートでは、DeepSeek をはじめとするオープンソースモデルの性能が大きく向上し、トップレベルのモデルとの差が縮まってきている点が強調されています。また、AI への投資規模がさらに拡大し、医療やビジネスの現場など、さまざまな領域での応用が一層進んでいる様子も報告されています。

一方で、得意な分野では人間を上回る成果を示すものの、論理的に正確な解を導き出す力や、エージェント的なタスクにおいては、依然として人間に及ばないことも指摘されています。今後は、そうした課題が次のモデル開発の焦点となっていくものと見られています。

民間の投資規模を見ると、日本は全体で 14 位と低く、他国とは桁違いの差があります。このままではAI分野で完全に後れを取ってしまう可能性が高く、米国や中国のような規模は難しいにしても、せめて 3 位のイギリス並みの投資を期待したいところです。

Screenshot from Starnford Univ. HAI

ここでは、大きな流れしか取り上げられませんでしたが、より詳細の内容に興味のある方はぜひレポートを読んでみてください。