トランプ次期政権が、自動運転車に関して、従来の州ごとの規制ではなく、(事実上の規制緩和となる)連邦での統一規制を検討しているとの報道を受け、テスラを含む自動運転関連企業の株価が上昇しています。
ただし、テスラに関しては、現状、規制よりも自社の完全自動運転(FSD)技術の精度がボトルネックとなっています。現行のFSDバージョン12.5のソフトウェアはかなり優秀な自動運転をすると評判ですが、まだ無人運転に対応できるほどの精度は持っていません。テスラに関しては、イーロン・マスクCEOが「いずれ来る」と言い続けている「ロボタクシーサービス」への期待が同社の株価の異常な程の高評価につながっていますが、そこまでの道すじはまだ遠いように思えます。
代わって、ロボタクシー分野では、Alphabet子会社のWaymoが業界をリードしています。Waymoは現行規制に適合した車両開発を進め、250万マイル以上の自動運転データを蓄積。サンフランシスコとロサンゼルスなど複数の都市で既にライセンスを取得し、商用の無人ロボタクシーサービスを提供中です。そのため、今回の規制緩和が実現すれば、一番にメリットを享受するのは、Waymoとなるでしょう。規制対応力と実績でWaymoはテスラに大きく水をあけています。
また、ロボタクシー普及の影響はライドシェア業界にも及びます。ウーバーはWaymoと提携し、オースティンなどいくつかの都市でWaymoのロボタクシー車両を同社の配車アプリ上で利用可能にすると発表しています。リフトも同様のパートナーシップを模索中です。ただWaymoはすでにサンフランシスコとロサンゼルスでは、自社アプリ(Waymo One)で配車サービスを提供していて、それが普及すると、ウーバーやリフトなどの「ミドルマン」の存在意義はなくなる可能性もあります。
株式市場では、ロボタクシーの行方がウーバーやリフトの株価に大きく影響をしていて、何かニュースが出るたびに、これらの株価は大きく上下に動いています。Waymoが自社アプリでロボタクシーサービスを全米に拡大してしまうと、どうしても人間のドライバーが運転するよりも安価で、かつ深夜でも安心できるサービスが提供できるようになるわけで、ウーバーやリフトは到底敵わなくなってしまいます。この2社の命運はWaymoに握られている、と言っても過言ではない状況です。
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まとめると、今回の連邦規制の枠組みは自動運転市場に好影響を与えていますが、現時点で最も恩恵を受けるのはAlphabetのWaymoだと思われます。
テスラは現在、大量のGPUを備えた「Dojo」というAIトレーニング施設をフル稼働させて、年内か年明けにはFSD13のリリースを予定していると噂されていますが、とにかく技術面での早急かつ飛躍的な進歩が求められています。