【Editor’s Insight】アメリカから見た日本のAI事情:ソフトバンク孫氏の存在感と日本の課題

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アメリカのニュースで日本の企業や研究機関の名前を見かけることは少ないですが、その中でも際立った存在感を示しているのがソフトバンクの孫正義氏です。

孫さんの名前は、AI関連の専門メディアだけでなく、NBCやBloombergなどアメリカの主要メディアでも度々取り上げられ、話題となります。

最近では、ソフトバンクが世界で初めてNVIDIAの次世代GPUであるBlackwellの供給を受ける企業になることが、東京で開催された「NVIDIA AI Summit Japan 2024」で発表されました。この発表は、NVIDIAの創業者兼CEOのジェンスン・フアン氏と孫氏の対談の中で行われ、アメリカのメディアが大きく取り上げました。

アメリカでの孫氏の評価は、主に「投資家」としてのものです。インターネット創世記から数々の大きな投資を成功させ、近年ではアリババやNVIDIA、Armなどへの投資で注目を集めています。

一方で、日本の大学や研究機関、スタートアップの名前が取り上げられることは稀です。元GoogleのTransformerに関わった研究者が東京で起業したSakana AIなどが、AI専門メディアで時折紹介される程度です。

対照的に、中国勢の存在感は際立っています。アリババやバイドゥ、TikTokのバイトダンスといった企業が、独自のLLMや画像生成AI、動画生成AIなどの分野で頻繁に話題に上ります。

日本でもAI関連の取り組みが進んでいるはずですが、世界的な注目度は低いのが現状です。国別のAI投資額ランキングで日本は12位、総合的なAI実力を測るGlobal AI Indexのトップ10にも入っていません。同じ東アジアの中国が2位、韓国が6位にランクインしている状況を見ると、日本も人材育成と資金投下を抜本的に強化する必要性を感じざるを得ません。(*アジア、という意味では、シンガポールは3位、インドは10位です)

日本が世界のAI競争に遅れをとらないためには、政府主導の戦略的な取り組みと、民間企業による今までとはレベルの違う積極的な投資が不可欠です。また起業するスタートアップは最初から日本の市場だけを見ずに、研究成果やサービスを世界に向けて発信・展開して、投資に見合うリターンを得ていく視座も求められます。

このままAIの潮流に乗り遅れてしまうことなく、日本発のイノベーションを継続させ、世界に発信していってほしいと切に願います。