テスラは、8月8日に予定していたロボタクシーの発表イベントを10月に延期することを決定しました。プロジェクトチームが追加のプロトタイプを製造するための時間を確保するためだとされており、デザインチームは車の特定の要素を再設計するよう指示されたとのことです。
発表イベントへの期待感から、テスラの株価は11日間連続で上昇し、時価総額は2570億ドル以上増加していましたが、延期発表を受け、7月11日には8.4%下落しました。一方、ライバルであるUberとLyftの株価はこのニュースを受けて上昇しています。
テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、2016年に発表した第2次マスタープランで自動運転タクシーサービスの構想を打ち出していました。マスク氏は10年以上前から自動運転技術について言及しており、顧客に「Full Self-Driving(FSD)」と呼ばれるサービスの購入を薦めてきましたが、FSDは現状のところは完全な自律走行を可能にするものではありません。
一方、Waymoはサンフランシスコ市内で自動運転タクシーサービス「Waymo One」を6月25日に一般に向けてスタートさせました。これまでの試験運用では乗客を乗せた運行を成功させており、一般開放後は週に数万回の乗車を行なっているとされています。
Waymoは、24時間365日、市内全域でサービスを提供しています。全車両が電気自動車で、100%再生可能エネルギーを使用しており、2023年8月の商用運転開始以来、推定57万kgの二酸化炭素排出量を削減したとのことです。また、多言語対応やアプリ内機能の充実など、利用者の利便性にも配慮しています。
安全面では、Waymoは15年以上にわたる自動運転技術開発の経験を活かしています。これまでに2000万マイル(約3200万キロ)以上の無人走行と200万回近くの有料無人走行を実施し、サンフランシスコでは380万マイル(約610万キロ)以上の無人走行で、人による運転と比較して事故件数を減らすことに成功しています。
筆者も先日サンフランシスコ市内を訪問しましたが、街中にすでに多数の無人のあるいは乗客を乗せたWaymo車両が走っていて、そこかしこで見かけることができました。現在Waymoはサンフランシスコ市内のみですが、今後はロサンゼルス、オースティン、フェニックスなどで順次サービスをスタートさせていくとされています。
テスラのロボタクシー発表延期は、自動運転技術の先端を走る会社としてアピールしたい同社にとって大きな打撃となりそうです。Waymoがファーストムーバーとして市場シェアを拡大させていく中、テスラの初動の遅れが今後深刻な影響を及ぼさないか注目されます。自動運転タクシー市場をめぐる両社の競争は、これからが本番を迎えると言えるでしょう。