Citiグループのレポート、AIがもたらす銀行業界の構造変化

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金融業界は今、人工知能(AI)による大きな変革の波に直面しています。Citiグループが最近発表した「AI in Finance」と題するGPS(Global Perspectives & Solutions)レポートは、AIが金融と貨幣の未来をいかに劇的に変えていくかを詳細に分析しています。

このレポートによると、AIの導入により、2028年までに世界の銀行業界の利益が2兆ドル(約320兆円)にまで押し上げられる可能性があるとされています。金融業界はデータが豊富な産業であり、顧客のAI採用も急速に進んでいることから、AIによる変革の最前線に立つことになると予測されています。

AIがもたらす変化は多岐にわたります。従来の仕事の一部が消滅する一方で、新たな職種が生まれる可能性も指摘されています。特に、銀行業界では職務の54%がAIによる自動化の高いリスクにさらされており、これは保険業界(48%)やエネルギー業界(43%)を上回る数字です。

Image Source: Citi GPS Report

しかし、この変化は単なる人員削減ではなく、むしろ職務の移行や再スキル化をもたらすと考えられています。JPモルガンやドイツ銀行などの金融機関では、すでにAIマネージャーやコンプライアンスオフィサーなどの新しい役職の採用が始まっています。

金融セクターのリーダーたちは、AIがもたらす利益への影響について楽観的な見方をしており、93%が生産性向上による銀行利益の増加を期待しています。ただし、AIの導入には課題も存在します。データセキュリティ、規制、コンプライアンス、倫理、競争に関する問題に加え、AI導入により金融セクターにおける価格競争が激化する可能性も指摘されています。

AIの導入は、FinTechやBigTechなどのデジタルネイティブな企業がリードし、機敏な既存銀行がそれに続くと予想されています。しかし、全ての新技術と同様に、AIも当初は誇大な期待から始まり、やがて幻滅へ、そしてその後に本格的に大規模な採用に至る、というサイクルを経ると考えられています。

金融界、そしてその先の世界では、AIがもたらす破壊的(Disruptive)な変化の可能性に多くの人が注目しています。問題は、それがどのように実現するかです。AIの時代における銀行業務の大きな変化は避けられません。それが単なる自動化ではなく、AIを活用した役割の変化に対応する必要性を示唆しています。