中国が政府系半導体ファンド「ビッグファンドIII」設立

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中国は、半導体産業を強化し、他国への依存を減らすために、3回目の国家支援投資ファンド「ビッグファンドIII」を設立しました。このファンドは、総額3440億元(約475億ドル:約7.5兆円)で、過去の2つのファンドよりも規模が大きくなっています。

ビッグファンドIIIの目的は、中国がチップの自給自足を実現することです。現在、台湾のTSMCが世界最先端チップの約90%を製造しており、中国と西側諸国は共にこの状況を懸念しています。ビッグファンドIIIは、大規模なウェハ製造やAI、5G、IoTなどで使用されるHBM(High Bandwidth Memory)チップの製造に投資される予定で、この発表を受けて中国の半導体企業の株価は上昇しています。

一方、西側諸国も半導体産業への投資を強化しています。米国のCHIPS法は2800億ドル、EU Chips Actは430億ユーロ、韓国の支援策は190億ドルの規模で投資を行うことが発表されています。また、フランスのDiamfab社はダイヤモンド半導体の開発を進めるなど、新技術の開発競争も激しくなっています。

ただし、過去の中国ビッグファンドの投資は必ずしも成功しておらず、汚職問題も発生しています。また、Nvidiaに匹敵する高性能なAIチップを自国で製造できるようになるまでには時間がかかるでしょうから、その間に、米国のAI業界は追いつくのが難しいところまで先に進んでしまうことも考えられます。

一方で、米国のトップ大学では、中国からの留学生が一定の割合を占めています。例えば、MITやスタンフォード大学では在校生の約7%が中国からの留学生で、留学生全体の30%を占めています。最近、米国の大学で発表されるAI関連の研究には中国系の名前が並ぶことも珍しくなく、そうした留学生がノウハウを自国に持ち帰ることを考えると、技術力のギャップは考えるほど大きくならないのかもしれません。

中国の半導体産業が今後どのように発展していくかは未知数ですが、ビッグファンドIIIの動向は米中のチップ戦争の行方を左右する可能性があります。両国の攻防が、AI分野の発展にどのような影響を与えるのか、注視していく必要がありそうです。