米ヘッジファンドPoint72のCEOでニューヨークメッツのオーナーでもあるスティーブ・コーエン氏は、CNBCのSquawkBoxに出演し、現在のAIの状況は90年代後半のインターネット創初期を彷彿とさせると語りました。
コーエン氏は、現在の状況はバブルではないと考えており、市場はAIが企業にもたらす影響をまだ「割り引いて」評価していると指摘しました。一例として、最近自社(Point72)のCTOから、AIを活用することで2500万ドル(約38億円)のコスト削減が可能だと聞いたというエピソードを紹介し、Point72より大きな企業ではさらに大きな効果が期待できると述べました(Point72の社員数は約2800人程度)。また、そうしたコストダウンはほんの一例にすぎず、これから本格的にAIが社会に導入される中での効果は相当大きい、というのです。
実際に、MetaやAlphabetなどの大手企業は人員削減を進めています。また、AT&Tでは、レガシーソフトウェアのアップグレードに生成AI を用いることで、多額のコストを削減しています。
コーエン氏は、AI分野の勝者はまだ明らかではないとし、90年代後半のインターネット勃興期と同様に、この技術革新から新しい優良企業が生まれると予想しています。サンフランシスコベイエリアでは、基盤モデルの上に構築されたAI Wrapper企業が注目を集めていますが、AIの分野においては(現状上場企業が少ないため)未上場企業への投資意欲が非常に高く、そうした投資を受けて今後新しいサービスを構築する企業が多数登場すると考えられています。
AI業界に関わる専門家多くは、現在の状況は99年のドットコムバブル最末期ではなく、95年の状況に近いと考えています。筆者も同感です。当時は94年にインターネットブラウザである「ネットスケープ」が発表されたことにより、一般の人がインターネットに触れる機会が増え、そこからインターネット関連サービスが乱立。2000年にバブルが崩壊するまで間、約5年間は狂騒の期間が続きました。2022年末にChatGPTが発表されてから約1年。95年の状況に似ているとされるのはまさにこうした理由からです。当時と全く同じ軌跡を辿るとは思いませんが、少なくとも今後数年は90年代後半と似たような、バブルに近い高揚した雰囲気が続くことが予想されます。