2024年末の現在、AI検索サービスの競争が激化しています。この記事では、筆者が実際に使用した経験をもとに、オススメのサービスを紹介します。AI検索専業の3社(Perplexity、Felo、Genspark)とAIチャットに検索機能が追加されたサービス(ChatGPT Search、Gemini 1.5 Pro with Deep Research、Mistral Web Search)を比較し、現時点での最適な選択肢を探ります。
結論から言うと、現時点で筆者のおすすめの検索サービスは、「Felo」の有料版、です。以下、その理由も含めて、少し詳しく解説します。
1)AI検索専業サービス:
>Perplexity:先行者の課題と今後の期待
Perplexityは、AI検索サービスの先駆者として知られています。しかし、今年7月以降、検索性能の向上を実感できず、10月に発表された推論モードも検索結果の向上にはあまり寄与せず、期待外れに終わってしまいました。とはいえ、今のところは他社と比べて若干納得感のある回答を生成してくれることもあり、筆者は通常はPerplexityを使用しています。
Perplexityの強みは、早くからこの分野に参入し、多くのユーザーを獲得してきたことです。今後は、検索結果そのものの性能向上に注力することで、先行者としての地位を維持できるかもしれません。ただ、競合他社の追い上げは厳しく、差別化が難しくなってきているのも事実です。
Perplexityには、検索結果をブログ風の記事に仕立てる「Pages」やショッピング機能、広告機能など、検索に直接関係ない周辺機能をリリースしていますが、ユーザーとしてはあまり必要性を感じません。むしろ、これらの機能開発に注力するよりも、検索精度の向上に経営資源を集中させて欲しいと願っています。
>Felo:日本発のAI検索サービスの台頭
Feloは、日本のスタートアップであるSparticle社が開発したAI検索サービスで、2024年7月にサービスを開始しました。FeloはPerplexityと同等の検索結果を提供するだけでなく、検索結果を用いてプレゼン資料やマインドマップを作成する機能など、日本のビジネスマンの日常業務に寄り添った周辺機能が充実しているのが特徴です。
検索結果の精度は、Perplexityと遜色ありません。筆者はこれまでPerplexityを使ってきたため、現在もPerplexityを主に利用していますが、これから有料プランを検討する人であれば、Feloを選ぶのがおすすめです。円安の影響もあり、FeloとPerplexityの月額利用料には大きな開きがあります。Feloが月額2,000円程度なのに対し、Perplexityは(為替レートにより変動はあるものの)3,000円程度となっています。
Feloの無料版でも1日に数回、より精度の高いProサーチが利用可能です。有料ユーザーになるとProサーチの回数制限が大幅に増え、通常の使用では上限に達することはないでしょう。日本のビジネスマンが使いそうな周辺機能を備えていることも考えると、現時点でPerplexityよりもFeloに軍配が上がります。
>Genspark:インターフェイスの改善に期待
Gensparkは、マイクロソフトやBaidu、アリババなどでの経験を持つエリック・ジン氏が創業したAI検索専業の会社で、2024年6月にサービスを開始しました。本社はカリフォルニア州のパロアルトとシンガポールにあります。
Gensparkの検索結果の精度は、PerplexityやFeloと遜色ありません。PerplexityのPagesに相当するSparkPages、マインドマップ作成機能、検索を掘り下げてリサーチしてくれる「Genspark Autopilot Agent」など、機能も豊富です。
ただ、現時点ではインターフェイスが整理されておらず、ごちゃごちゃとしていて少し見にくいのが気になります。まだベータ版という位置づけのようなので、今後、見やすさや使いやすさが改善されれば、Perplexity・Feloの強力な対抗馬になるかもしれません。
>その他のAI検索サービス:精度向上に期待
You.comやKomo AIなど、他にもAI検索サービスは数多くあります。それこそ雨後の筍のように乱立していると言っても過言ではありません。ただ、無料版での検索結果を比較する限り、精度はあまり高くないと感じました。ただし、筆者が試したのは無料の簡易版であり、有料会員になることで結果の精度が向上する可能性はあります。
2)AIチャットに検索機能が追加されたサービス
>ChatGPT Search:利便性と今後の改善に期待
OpenAIが12日間のイベント「12 Days of OpenAI」で、すでに10月に正式リリースされていたChatGPT Searchは、無料ユーザーにも開放されました。ChatGPTは、入力された質問に回答するために、Webの情報を検索したほうがよいと判断すると自動的に検索を行いますが、より明示的に「検索」をしたい場合は、プロンプト入力欄下の地球儀アイコンをクリックすることで検索結果を得ることができます。
その検索結果の信頼性は向上しており、ハルシネーション(誤った情報の生成)もだいぶ減りましたが、回答の内容はPerplexityやFeloに比べて簡易的です。ただ、これは出力形式の問題だけだと思われるため、すぐに改善される可能性があります。
現時点では、本格的な検索にはPerplexityやFeloを使い、ChatGPTを使用中に簡単な情報を調べたいときにChatGPT Searchを利用するという使い方がいいように感じます。筆者も最近AIチャットとしてChatGPTをメインで使うようになってから、ChatGPT Searchの利用頻度が増えています。近い将来、ChatGPTの検索の回答結果がより充実してくれば、AI専業の検索サービスは不要になるかもしれません。
>Gemini 1.5 Pro with Deep Research:高精度だが課題も
GoogleのGeminiの有料版には、「1.5 Pro with Deep Research」というオプションがあります。これを利用すると、上述のGenspark Autopilot Agentのように、時間をかけてWeb上の情報を深くリサーチし、高精度な回答を返してくれます。ただ、結果表示までには10~15分ほどかかることもあるため、本当に重要な調べものをするときに適しています。
現行のGemini 1.5 Proは、ネットに接続されているため、通常のチャットでも質問に応じてWeb検索を行い、情報を返してくれます。しかし、デフォルトではどのWebサイトの情報を基にしたのかリファレンスがつかないため、不安を感じます。
GoogleはAI Studioの中で実験的に「Grounding」という機能を提供しており、これを有効にすると、検索結果にリファレンスをつけた状態でAIチャットが回答を作成してくれます。この回答は、PerplexityやFeloと同等の精度があると感じました。しかし、本番環境にはまだ搭載されておらず、評価することができません。
Googleは、以前Geminiで誤情報を回答して大きな批判を受けたため、通常よりも慎重にこの機能を見極めているのかもしれません。また、GeminiにGroundingを搭載すると、既存のWeb検索の広告主が離れ、本業のビジネスに影響が出ることを懸念しているのかもしれません。
いずれにせよ、Grounding機能が通常のGeminiに搭載されれば、こちらもAI専業の検索サービスは不要になる可能性が高いでしょう。PerplexityやFeloも、OpenAIやGoogleの動向を特に警戒しているはずです。
>Mistral Web Search:改善に期待
フランスのスタートアップMistralも Web Search機能がついています。同社のLe Chatでプロンプト入力欄下の地球儀アイコンをクリックするとWeb検索を行い、回答を出力してくれます。この精度はある程度高いのですが、追加質問をすると前の回答を踏まえずにトンチンカンな回答をすることがあるなど、特に日本語で使用している際に細かい不具合があり、現時点ではあまり実用的とは言えません。ただ、最初の回答精度は高いだけに、改善に期待したいサービスです。
3)結論
現時点で筆者がオススメするのは、日本発のAI検索サービス「Felo」です。Perplexityと同等の検索精度を持ちながら、日本人ビジネスマン向けの周辺機能が充実しており、月額料金も安いのが魅力です。
ただ、ChatGPTやGeminiの検索機能が向上すれば、状況は変わるかもしれません。特にGeminiのGrounding機能が一般ユーザーにも開放されれば、AI専業の検索サービスは不要になる可能性が高いでしょう。
AI検索サービスの世界は、日進月歩で進化しています。今後も、各社のサービス改善や新機能の登場から目が離せません。また状況が大きく変わってきましたら、不定期でこうしたレビューを行っていきたいと思います。